京都市伏見区の宇治川大橋南詰東側で3月12日、「宇治川ヨシ焼見学会」が行われた。主催は「伏見楽舎」、協力は「山城萱葺」。
観月橋から国道1号線までの宇治川の河川敷は広大なヨシ原が広がり、古くから良質なヨシズの産地として知られてきた。ヨシ刈りを含む「蘆の茅採取」は、2020年12月にユネスコの無形文化遺産「伝統建築工匠の技:木造建造物を受け継ぐための伝統技術」への登録が決定され、次世代に継承すべき文化の一つとして再評価されている。
当日は8時から地域住民ら30人が参加してヨシ焼きを行った。
「山城萱葺」の石井規雄さんは、「ヨシ焼きは地元の皆様のご理解のもとに成り立っており、『地元の方々にぜひご覧いただきたいということ』『毎春の行事として伏見に春を告げる催しとしてみなさんに楽しんでいただきたい』という想いで企画した」と企画の意図を説明する。
「ヨシ焼きの歴史は古く、当社として把握している限りでは、ヨシ焼きは約100年前から行われている伝統ある野焼き行事。縄文時代から数万年前にも同様のことが行われていた土壌の調査結果も出ている。また、安土桃山時代には、貴重な天然資源として石田三成の軍資金にもなっていたという伝承もある。ヨシは地下茎で繋がっており、地表の古いヨシを焼くことで新芽が芽吹きやすくするのが野焼きの目的。こうして焼くことで春には緑の絨毯のような新芽を目にしていただける筈」と語り、「時代がどんどんスピードアップする昨今、自然の営みに沿ったこのような活動を継続することで、自然との関係性を紡いでいきたい」と意気込む。
当日イベントに参加した伏見区在住の南堀童子(わか)さんは「伏見に住んで15年になるが、今回のイベントではじめて伝統的な伏見の天然資源について知ることができ、驚きとともに感動した。火で焼くという自然ならではの手法で自然を持続させていることの大切さに気づけた」と話す。
イベントを企画する伏見楽舎事務局によれば、12日以降も月内の最適な天候に合わせて、同会場周辺で今月末までに全てのヨシ焼き作業を完了させるという。
問い合わせは「伏見のヨシ原、再発見!」プロジェクト事務局(TEL 0774-55-6912)まで。