伏見稲荷大社で6月10日、田植祭(たうえさい)が行われた。
田植祭は五穀豊穣(ほうじょう)を願い神田に苗を植える神事。古くは1517年に行われた記録があり、戦乱などで途絶えてしまっていたが、1930年(昭和5年)、昭和天皇即位記念事業の一つとして再び行うようになった歴史がある。
当初は向日市寺戸町二枚田に神田が設けられたが、その後1948(昭和23)年に伏見稲荷大社の境内に移設された。神田の広さは約3.3アール(約100坪)で、2俵半(約150キロ)の収穫が見込めるという。
田植祭は13時から本殿で祝詞の奏上や神楽女(かぐらめ)の御田舞(おんだまい)などの神事が行われ、その後、神田に移動して、いよいよ田植えが始まる。
初めに神田のおはらいを行い、そして御幣櫃(ごへいびつ)と呼ばれる籠から斎串(いぐし)を取り出し、水の出入り口に斎串を突き刺して清める。その後、菅笠(すげがさ)をかぶった早乙女(さおとめ)に早苗が配られ、約30分かけて田植えが行われた。
神田の前は多数の観光客が詰め掛け、特に西洋人の姿が目立った。オーストラリアから来たというグループは「伏見稲荷大社に来たら、たまたまこんな素晴らしい神事が見られてラッキーだった。日本の歴史を感じることができて、ますます日本のことが好きになった」と話す。
今回植えられた苗は、10月25日の抜穂祭(ぬいぼさい)で収穫され、11月に行われる新嘗祭(にいなめさい)で神前に供せられる。