京都市伏見区を流れる宇治川派流で3月19日、宇治川派流沿いの植物や生き物について、専門家の解説を聴きながら散策するイベント「宇治川派流生態観察ウォーク」が行われた。主催は桃山プロジェクト。
桃山プロジェクトは、伏見桃山の自然・歴史景観まちづくりを行う住民団体。伏見桃山の学校や公園などに約300本の桃の苗木を植樹・管理を行ってきた。この取り組みが評価され、2016年度の「京都景観賞 景観づくり活動部門」の優秀賞を受賞した。
代表の藤崎壮滋さんは「かつては伏見の水運の中心だった宇治川派流だが、地域一帯の植生を調査・保全するような活動が行われていない。このような自然観察活動を通じて多くの方に関して持っていただくことで、今後の調査・保全活動につなげていきたい」とイベントの目的を説明する。
宇治川流派は、豊臣秀吉が巨椋池(おぐらいけ)に流れ込んでいた宇治川に堤を築いて迂回させ、伏見城の建築資材を運ぶため伏見城の外堀・濠川と結んだ水路。江戸時代には水路沿いに問屋や旅籠(はたご)が立ち並び、伏見の流通を支える大動脈として栄えた。
この日のツアーガイド役で「水辺の生き物(魚と水草)」を研究する小田龍聖さんは「明治以降、『度重なる宇治川の改修工事』『琵琶湖疏水(鴨川運河)の開削』『三栖閘門(みすこうもん)の建設』『京橋水路の埋め立て』などにより、水流が大きく変化した。もともと宇治川の水が循環していた水の流れが、琵琶湖疏水を源流とするようになり、その水は宇治川に放出されている。琵琶湖疏水を通って琵琶湖の水草が流れてくる」と解説する。
「疏水は例年、冬季は琵琶湖から入る土砂を浚渫(しゅんせつ)するため、冬季期間は取水を中断する。その影響で派流の水もない状態が続く。この状態は河川のリセットを意味している。100年近くこの環境が続いているので、この近辺の生き物や植物のリズムに組み込まれている」とも。
一行は「アジサイの葉には毒があるので注意が必要」「水辺に多いしだれ柳は、実は柳の中ではメジャーな品種ではない」「ウバメガシは日陰の斜面などの生垣に利用されるが、本来、10メートルは超える木になる」「ヤドリギは甘い果実で鳥を呼び寄せ、便として排泄する時に粘着性のある種子を木に付着させて、宿主の枝から垂れ下がって、団塊状の株を形成する。宿主が落葉する冬季が一番判別しやすい」など、小田さんの解説を聴きながら散策した。
藤崎さんは「普段、何気なく見ている水辺の景色だが、専門家の解説を受けながら散策すると、また違う景色に見えてくる。今後も定期的に開催することで、もっと多くの方に宇治川派流の生態を知ってもらいたい。親子で参加できるツアーなども企画するので、ぜひ参加していただけたら」と呼び掛ける。