京都府長岡京市の柳谷観音・楊谷寺(ようこくじ)で2月17日、野外で行う大規模な護摩法要「採燈大護摩供(さいとうおおごまく)」が行われた。
楊谷寺は806(大同元)年、清水寺の開祖延鎮(えんちん)により建立された。空海が祈祷を施し、眼病に悩む人々のために霊水にしたという独鈷水(おこうずい)や重要文化財の「十一面千手千眼観世音菩薩(じゅういちめんせんじゅせんげんかんのんぼさつ)」など、眼病祈願の寺として信仰を集める。
豊臣秀吉の側室・淀殿は淀城にいた時は同寺の水で顔を洗っていたという伝承が残る。近年はアジサイの寺としても知られている。
採燈大護摩供は江戸時代後期から続く伝統行事。聖域で護摩木や人形(ひとがた)とよばれる紙に、家内、縁者の願い事と氏名を書き、それをたき上げる。同寺がある乙訓(おとくに)地域では最大の護摩法要で、例年は2000人が、この日は朝から雨となったが、1000人が参拝した。
11時からまず本堂で法要が行われ、寺院関係者が吉野の大峰山(おおみねさん)から招いたという山伏の吹く法螺貝(ほらがい)に合わせて結界に移動した。「山伏問答」の後、「法弓(ほうきゅう)の儀」と「法剣(ほうけん)の儀」が行われた。
法弓の儀は邪気を祓い、場を清めるための儀式で、東西南北と護摩壇、鬼門の方角に向けて矢を放つ。放たれた矢は持ち帰ることができる。
その後、願文(がんもん)が読み上げられ、護摩壇に火がつけられた。焚き上げた煙は、身と心を清めるといわれており、参拝客は願いごとをしながら煙を頭や顔にこすり付けていた。
楊谷寺の日下俊英住職は「採燈大護摩供は当寺で最も重要な法要。今年も無事開催できたことに感謝する。お寺は心のリセットをする場。古来から続く伝統や文化に目を向けることで、心の中をもう一度見直し、入れ替えるきっかけにしてほしい」と話す。