伏見稲荷大社で10月25日、抜穂祭(ぬきほさい)が行われた。
同祭は伏見稲荷大社で行われる「農耕神事」の一つ。伏見稲荷は商売繁盛の神様として有名だが、古くから時の朝廷が、雨乞いや止雨とともに五穀豊穣(ほうじょう)を祈願してきた歴史がある。稲荷の名前の由来も山城国風土記の逸文には「稲(イネ)が生った(なった)」とあるなど、稲との関わりは深い。
4月12日の水口播種祭(みなくちはしゅさい)で稲の種をまき、6月10日の田植祭で植えられた神田の稲を刈り取る神事。神田は、田植えから4カ月半経過した稲が黄金色に色づき、この日の神事を迎えた。
この日は、本殿で祝詞の奏上や神楽女(かぐらめ)の抜穂舞(ぬきほまい)の神事が行われた後、神田に移動。外国人観光客など大勢の見物人が見守る中、神田のおはらいを行い、再び神楽女(かぐらめ)の抜穂舞(ぬきほまい)を舞う中、すげがさ姿の男女が稲刈りを行った。
神奈川県から訪れたという60代の夫婦は「何度も伏見稲荷大社に来ているが、こんな神事の日に来られてうれしい。境内に神田があることも知らなかった。古式ゆかしい儀式を本殿の神事から神田の稲刈りまで全て見られて、本当に満足」と笑う。
刈り取られた稲は、11月23日の新嘗祭(にいなめさい)にお供えされ、稲藁は11月8日の火焚祭(ひたきさい)でたき上げられる。