京都すばる高校・起業創造科、文科省の事業指定と同じ年に新設された学科。「ビジネスの分野で新たな価値創造ができる人材」「時代の変化に柔軟に対応できる人材」の育成を目指し、ユニークな学びの場を展開している。
第2回目の今回は、「京都すばる高校地域協働学習実施支援員」として、外部から起業創造科を支える三木俊和さんに話を聞いた。
― まずは三木さんの簡単な自己紹介をお願いします。
三木(以下敬称略) 本職は「伏見いきいき市民活動センター(以下、伏見いきセン)」のセンター長として活動しています。伏見いきセンでは地域住民の方と連携した様々な取り組みと並行して、龍谷大学などと連携し、「コミュニティー・ラーニング」をコンセプトに、学生と地域が共に学びながら活性化に取り組む活動(コンソーシアム)支援を行っています。
― 京都すばる高校をサポートすることになったきっかけについてお聞かせください。
三木 5年ほど前、京都すばる高校が「文部科学省の地域との協働による高等学校教育改革推進事業(プロフェッショナル型)」に申請する、という話を聞きました。そこで大学連携で培った「コンソーシアムのノウハウ」を活かして欲しいとアプローチした結果、実績を評価いただき、すばる高校の「地域協働学習実施支援員」としてサポートすることになりました。
― 三木さんは大学と高校のコンソーシアムに関わっていますが、大学生と高校生の取り組みの特徴や違いについて教えてください。
三木 大学生は高校生に比べて社会との繋がりや経験値も豊富です。その分「何をしたいのか」が明確で、自分の意思でカリキュラム設計が可能です。一方で高校生は、特に入学直後は経験値が少ないため、目標やゴール設定ができていません。高校3年間を「可能性の種と出会うための期間」と定義した場合、この期間の学校側のサポートやカリキュラム設計は重要です。
― 2019年に文科省から採択を受け、起業創造科が立ち上がります。三木さんの役割をお教えください。
三木 カリキュラムの設計は起業創造科の先生方が行なっています。私の役割はその設計に沿う形で、生徒と社会をつなげていくこと。「かっこいい大人シリーズ」というタイトルで、起業家を中心とした外部講師の話を聞いたりする参加型授業があります。その外部講師のキャスティングをしています。
― キャスティングする際のポイントを教えてください。
三木 大成功を収めている雲の上のような存在の起業家を招いても、生徒にとっては夢物語になりがちでリアリティに欠けます。そこで年齢的にも親しみやすく、手を伸ばせば手が届きそうで、現実的な目標になり得る起業家に絞ってキャスティングしました。
私がキャスティングしたのは「株式会社RE-SOCIAL 代表取締役・笠井大輝さん=ジビエ事業」「移動する竹村商店 代表・竹村知紘さん=やきいも・かき氷屋台」「株式会社taliki CCO 一般社団法人Impact Hub Kyoto Maker 原田岳さん=インキュベーション事業など」「秘密基地こむこむ酒場 代表・炭竈昌人さん=銭湯酒場」「京都信用金庫 京信人材バンク 共同代表・矢野凌祐さん、新田廉さん=人材紹介・求職サポート」です。
― 印象的だった「かっこいい大人シリーズ」の授業でのエピソードを教えてください。
三木 「移動する竹村商店」代表の竹村知紘さんの授業が印象的でした。竹村商店は、夏は移動式のかき氷店、秋~冬は「竹村の焼きいも研究所。」と名称を変えて移動式のやき芋店を運営しています。
竹村さんの、大学生の頃から苦労して起業した話や、移動屋台を楽しく見せる創意工夫などの話は、生徒たちに、「自分たちでも工夫すればできる」という大きな気づきときっかけを与えてくれたようです。実際に授業後の質問コーナーでは、質問が多すぎて時間をオーバーしてしまい、生徒たちからのリクエストで、翌週にも質問コーナーが設けられました。まさに「じぶんごと」として、生徒の心に火を付けてくれた事例だと思います。
― 最後に3年間を振り返っていかがでしょうか?
三木 起業創造科の授業は、自分自身が「高校生の頃にこんな授業があったら受けたかった」という内容です。授業を通して「起業は特別な人がすることではなく、自分たちの生活の延長線上にある」ということを、生徒たちは理解してくれました。冒頭でお話しした「可能性の種」と出会え訳で、そのことが今後「何をしたいのかの明確化」の大きな原動力になってくれると思います。今後の生徒たちの成長が今から楽しみです。