京都府長岡京市の柳谷観音・楊谷寺で12月2日、初めての庭園ライトアップが行われた。
同市在住の照明デザイナーの小川ユウキさんが、ライトアップを手掛けた。
書院前庭として、江戸時代中期に作庭された同寺の庭園(浄土苑)は、戦前に「古都百庭」に選ばれた名勝。庭は、山の急斜面を巧みに活用しており、数多くの石組、刈込、灯籠、植栽が配置された枯山水式庭園で、十三仏や菩薩像などに見立てた立石が置かれている。1987(昭和62)年には京都府の指定名勝に登録された。
同寺院の日下俊英住職は「昨年から『自然に寄り添ったライトアップ』を模索していた。昨年も試験的にライトアップをしてみたが、庭全体が照らされ石仏の陰影がつかない、照明器具が昼間に露出するなど課題も多かった。そんな中、知人に紹介された小川さんに依頼したところ、庭園の個性を見事に照明で表現してくれた。開催の後押しをしてくれたMKタクシーにも感謝している」と振り返る。
商業空間や宿泊施設の照明デザイナーとして活躍する小川さんは「この庭園は、山の斜面を利用した『垂直方向に設計された庭』。いろいろな角度から庭が表情を変えて見えるのも特徴。自然本来の静けさと、庭にとって見せるべきものを見せながら陰影を作ることがテーマ。書院から見上げる形で、照明を通常のライトアップよりも多く配置した」と話す。
この日のライトアップには特別夜間拝観を申し込んだ15人が参加した。17時に薄暗くなった庭園にライトがともされると、参拝客から「こんなに品のあるライトアップは初めて」「自然に寄り添ったライトアップという言葉がぴったり」との声が聞かれた。
書院や庭園では、SNSで拡散されて人気になっている手水鉢(ちょうずばち)の紅葉グラデーションアートや書院各所に和傘を使ったライトアップを前に、参拝客がカメラやスマートフォンで夢中に撮影する光景が見られた。
同寺執事の日下恵さんは「今回のライトアップは、11月23日に内覧会、25日にMKタクシーとコラボしたライトアップ食事会を行った。一般公開は今日(12月2日)だけ。1日だけの開催で名残惜しい気もするが、来年に向けていい機会になった。今後もお参りされる方をお迎えする企画をいろいろと考えていきたい」と話す。