京都市伏見区の藤森神社(伏見区深草鳥居崎町)で5月5日、駈馬神事(かけうましんじ)が行われた。
藤森神社は今から約1800年前に、神功皇后によって創建された皇室ともゆかりの深い古社。菖蒲(しょうぶ)の節句発祥の神社としても知られ、現代では勝運と馬の神様としても知られる。
駈馬神事は781年から続く藤森神社の伝統行事で、京都市の無形民族財にも登録されている。馬上で「敵矢の降りしきる中を駆ける技・手綱潜り」「敵の動静を見ながら駆ける・逆乗り(地藏)」「敵矢を打ち払いながら駆ける・矢払い」「敵に姿を隠して駆ける・横乗り」「敵をあざけりながら駆ける・逆立ち(杉立ち)」「敵矢の当たったと見せて駆ける・藤下がり」「前線より後方へ情報を送りながら駆ける・ける・一字書き」など7つの技を披露する。
室町時代には衛門府出仕武官により、江戸時代には伏見奉行所の衛士(えじ)警護の武士や町衆らが、馬上の技を競い合った。昭和初期までは神社門前の街道で行われてきたが、現在は神社境内で行われている。
この日は約2万人の見物客が見守る中、神事が行われた。乗り子が次々と技に挑戦。馬との呼吸やタイミングが合わず失敗するシーンも見受けられたが、乗り子頭の岡田俊秋さんが「手綱潜り」を、齋藤仁尚(ひとひさ)さんが「手綱潜り」「一字書き」を成功させ、見物客から大きな拍手を浴びていた。岡田さんの長男の拓馬さんも騎乗して「素駆け」を披露した。
藤森神社駈馬神事保存会の北尾副会長は「駈馬神事は世界的にも珍しい祭事。乗り子の育成やくら装着の講習会などを通して、次世代に魅力と技を引き継いでいきたい」と話す。