京都市伏見区中書島の老舗昆布店「きたせ昆布老舗」が展開する、おこぶ・おだし・おばんざいの店「おこぶ北淸(きたせ)」(京都市伏見区南新地)が3月3日、オープンした。
「きたせ昆布老舗」は1912(明治45)年、丹波橋で「弥千代(やちよ)昆布」として昆布製品製造卸を開業。1935(昭和10)年、2代目北澤清一の名前から「北清昆布」と改称して納屋町商店街に移り、昆布とカツオの小売りを始めた老舗。昨年末の「納屋町センター」解散に伴い、現在の店主の北澤雅彦さんが生まれ育った中書島に戻ってきた。
北澤さんは「伏見の南浜は、江戸時代から明治・大正にかけて大阪と水運で結ばれ、交通と流通の拠点だった場所で、昆布屋も多かった。そういう時代背景もあり、丹波橋で創業し、伏見の台所といわれた『納屋町商店街』に出店した。当時、納屋町に店を出すのはステータスだったと聞いている。今回、中書島に戻ることは『自分の生まれ育った町』『原点に戻る』『京阪特急も止まる大阪と京都の交通や文化の交差点』などの理由から決めた」と話す。
さらには「中書島との関わりも関係している」という。北澤さんは5年前に伏見に戻るまで、大阪などでデザイン関連の仕事をしていた。5年前に家族が病気になったのをきっかけに、家業を継ぐ形で中書島に戻ってきた。
当時の印象について、「外で仕事をしてきて改めて中書島を客観的に見ると、面白いコンテンツが一杯あった。こんなに魅力的な街だったのかと新鮮だった」という。「かつて中書島は江戸時代から続く花街だった場所で、今でもその当時の建物が一部残る。それも魅力の一つ。レトロな銭湯があり、映画のロケに使われるなど昭和の雰囲気も色濃く残る。大坂と伏見を結んだ三十石舟の船着き場だった場所柄、大坂の文化も入って来やすかった。一言で言うと『ごちゃ混ぜ』の魅力があった」とも。
一方、地域の高齢化が進み商店街もかつての活気が無くなるなど、中書島の活性化は大きな課題となっていた。4年ほど前から「昭和の色濃く残る中書島を京都や大阪の若い人たちに知ってもらおう」と月に一度の飲み会「Standing,Drinking 月一の開催」「レトロな銭湯・新地湯での上映会」「中書島を舞台にした映画撮影」などを仲間と企画。「中書島の辨天祭のかがり火の再開」にも関わっている。
今回の新店舗について、北澤さんは「地域に人を呼べる店」「地域に昆布を発信できる店」を目指している。昼間は、昆布や昆布だしを使ったお茶漬けを提供する「だしカフェ」。夜間はだしを使ったおばんざいや地元伏見のお酒などを提供する「だしバー」として営業する。
「いろいろな中書島を活性化するイベントを企画し、仲間の輪も広がり、目指している方向性も見えてきた。中書島のブランディングの拠点となる店にすることで、一緒に中書島や伏見を活性化できる若者の支援もできたら」と意気込む。
「昆布は下支えが役割。だしが出すぎると料理を殺してしまう。僕も中書島の下支えをしていきたい」とも。
営業時間は昼:11時~14時 夜:17時~21時 不定休