京都市立深草小学校(京都市伏見区深草西伊達町)で10月12日、海を渡るチョウ「アサギマダラ」の特別授業が行われた。主催は同小学校と深草藤袴(ふじばかま)の会。
伏見の深草では秋の七草の一つ「フジバカマ」の原種を、同保存会が中心となって育てている。「フジバカマ」は、乾燥させると桜餅のような香りがすることから、平安時代から匂い袋に使用されてきた。京都では交雑により原種が長らく見つからなかったが、15年ほど前に西山の大原野(京都市西京区)で原種が発見されて以来、伏見の深草などでも育てるようになった。
深草藤袴の会代表の北仲重郎さんによると「フジバカマにはアサギマダラの雄が雌を引き寄せるオスの性フェロモン成分(ピロリジジンアルカロイド)が含まれており、10月ごろになるとアサギマダラの雄がフジバカマの蜜を吸いにやってくる。深草のフジバカマの数が増えるとともにアサギマダラの数も増えてきたので、アサギマダラの海を渡る習性にも注目して、アサギマダラの会と連携して深草小学校での特別授業を始めた」という。
この日は「BV アサギマダラの会」会員の藤野適宏(まさひろ)さんを講師に招いて、同小学校3年生126人を対象に授業が行われた。藤野さんは「アサギマダラは西南諸島や台湾・中国へ海を渡って旅するチョウ。別名を『渡りチョウ』ともいう。暑さや寒さに弱いので、春に南西諸島から北上して信州などの高原に飛来する。日本が涼しくなる9月以降は南下して南西諸島方面を目指す。群れではなく1匹で海を渡るのが特徴」と説明。
「羽の鱗粉(りんぷん)が少ない特性を生かして、日本国内や台湾でアサギマダラの羽にマーキングして放す調査活動が行われている。春の北上例として『台湾陽明山から滋賀県大津市』『長崎県新上五島列島から韓国江原道』、秋の南下例として『福島県北塩原村から台湾獅頭山』『石川県輪島市から中国浙江省』『和歌山県日高町から高知県香味市を経由して香港』などの移動記録がある。昨年に深草小学校で放されたうちの1匹が与那国島で見つかった」とも。
授業後半には53匹のアサギマダラが児童たちに配られ、グループに分かれてマジックで「10/12」「FKS(深草小学校の略)」「チョウの番号」を記入。記入途中で逃げ出したチョウは、この日特別授業に参加した京都市立伏見工業高校の生徒15人や地域住民が捕まえて、児童をサポートした。
その後、マーキングしたアサギマダラを持って同小学校の中庭に移動。藤野さんのカウントダウンで一斉にフジバカマを放した。児童たちは口々に「元気で飛んでね!」「行ってらっしゃい!」など飛び立ったアサギマダラに呼び掛けた。
藤野さんは授業の最後に「昨年は5日後に与那国島で発見された。今年もどこで見つかるか楽しみに待ちましょう」と締めくくった。