伏見稲荷大社や周辺の大岩街道地域の地層や地質を調査するフィールドワークが7月6日、行われた。主催は伏見区深草支所と龍谷大学政策学部・井上ゼミの地域連携を研究する、通称「ちきれん班」の3年生チーム。
伏見区の大岩街道地域は稲荷山の山麓部に位置し、竹林が生い茂り京壁や大相撲の土俵に使用される「深草土」の産地として有名で、古くから各方面で使用されてきた。しかし名神高速道路の開通や周囲から目に付きにくい地形もあり、高度成長期以降、採掘された土のくぼ地に産業廃棄物の廃棄や無許可での造成、違法建築の建築などが行われ社会問題化してきた。
京都市では2010年より「大岩街道地域の良好な環境づくりに向けたまちづくりの方針」を策定し、地域主体のまちづくりによる環境改善を目指している。一方の龍谷大学は、大学がある伏見区深草地域内で行政や地域との連携をテーマにした活動を推進しており、今回の企画は大岩地域の情報収集や地域内外への情報発信の一環として関わっている。稲荷山や大岩街道地域の地層を学ぶことで、大岩街道地域の土の採掘に至った背景を知ることが目的。
まず6月29日に「深草丘陵の地形・地質と自然環境」をテーマにした講義を行い、今回は「実際に地層を見て学ぶ」フィールドワークを実施した。講師は元京都大学理学部教員で地質学や古生物学が専門の神谷英利さん。龍谷大学の3年生4人を含む、伏見区の住民や区役所の担当者など13人が参加し、稲荷山の四つ辻付近、伏見稲荷から大岩街道地域へと続く古道「竹之下道」、大岩街道地域に唯一現存する土の採掘場を観察し、そこで事業を営む事業者との意見交換を行った。
神谷さんは「稲荷山周辺は『丹波層群』と『大阪層群』の2つの地層で構成されている。丹波層群は2億年前ごろからの古い地層で、非常に硬い岩層。一方の大阪層群は約300年前から30万年前までに形成された新しい地層で軟弱。かつて大阪から京都盆地まで海の侵入があり海成粘土層等で構成されているため、酸性土壌になった」「山の麓は大阪層群、それより上は丹波層群なので地層の違いがよく分かる。その境目に断層が走っていて、竹之下道はそれに沿って造られた。大阪層群側は酸性土壌を好む竹林、丹波層群側は岩盤なので根を深くまで伸ばさなくても良い樹木と、植生も異なる」と説明。
大岩街道地域の土が採掘された理由については、「砂利や粘土など比較的軟弱な土壌のため採掘しやすく、壁土などで荒壁や中塗りに同じ土を使用することで強度も増すことから施工しやすいよい土と定評があり、古くから好まれてきた」と話す。
参加者で龍谷大学3年生の中川翔太さんは「ゼミがきっかけで大岩街道地域の取り組みを学んでいる。今回のフィールドワークで、深草土が採掘されてきた歴史や背景が分かった。採掘業者の話では深草土が文化財の保護のために欠かせないことや土の需要の移り変わり、土のブランド化などを目指していることなども勉強になった」という。
伏見区深草支所では、今後も同大学や海外の大学などとも連携して、同地域の将来像を描いて実現していくという。