京都府京田辺市の茶葉製品開発会社「都茶寮」が11月9日、玉露の出品茶を抽出した最高級ボトリングティー「神秘の雫(しずく) 宇治玉露・YASUNORI」(500ミリリットル、3万8,000円)の販売を開始した。
京都宇治茶の最高級産地といわれる同市内で、お茶の専業農家を営む西川泰徳さんと兼業農家の北川欽也さんが立ち上げた同社。同市で最も古い農家として知られる西川家と北川家が、共同で新しいお茶の取り組みを始めたことに注目が集まっている。
同市は、江戸幕府が大政奉還後、お茶栽培の規制緩和された頃にお茶栽培が開始された歴史を持つ。それまではお茶栽培には認可が必要であったため、宇治茶は作るのも売るのも専売特許だった。それが緩和され京都南部では新たに茶を生業とする農家が増え、両家もその時に新規参入した。
北川さんは「それ以前から農家だったが、米農家だったと聞いている。家系図で確認できる範囲で、私は6代目。西川さんとは同年代ということで、以前から今後の茶業界のことを話し合ってきた。それが形になったのが今回の取り組み」と背景を説明する。
出品茶について北川さんは「決して一般に出回る事のない、品評会のためだけに1年かけて作る茶農家の最高傑作が出品茶。個人の冠(名前)で競う品評会専用の茶葉は、茶畑の管理から一般茶葉と異なり、土、栄養分、pH、害虫駆除などあらゆる面で手間をかけている」「田辺玉露の収穫は年にたった1度のみ5月の旬の時にしか収穫しない。一般茶でも収穫量は少ないが、出品茶葉の畑では、さらに求める茶葉は旬で味がしっかりとのって芽吹いた新芽のみ。少しでも硬い新芽は摘まないため、必然と採れる量は少ない」と解説する。
収穫された茶葉は、品評会のために形をそろえるためにさらに選別される。北川さんは「その時に選別されるふぞろいの茶葉たちが実は一番味が詰まっている部分。業界で『出物』『頭』などと呼ばれるうま味の詰まった部分があることは、ほとんど知られていない。一般には流通せず、お得意先、上顧客などに流れる」と話す。
今回、出品茶の「出物」のみを使った最高級の宇治玉露ボトルティーを作った。テニスコート4面分の茶畑から数キログラムしか取れないという出品茶の「出物」を原料茶葉として用い、茶葉と相性の良い静岡の軟水を使って完全無添加で完成させた。
北川さんは「9日から出展している展示会では各業界のバイヤーから高い評価を頂いた。今後はブライダル、ギフト贈答、ホテル、百貨店などの新しい販売形態を作り、最高級宇治茶の新しい提案を海外に広めたい」と意気込む。
完全受注生産で、注文は都茶寮のホームページからメールで受け付ける。問い合わせは同社(TEL 0774-62-4575)北川さんまで。